シビックテックコミュニティが地域に届けるもの 〜生駒編〜

本記事は、Civic Tech Advent Calendar 2017の12/11の記事として作成したものです。

CODE for IKOMAは、2018年1月で立ち上げから4年を迎える。これを機に、シビックテックコミュニティが地域に届けたものって何だろう、地域で果たす役割って何だろう、ということについて振り返ってまとめてみた。

市民活動の分野に新しいITの風を運ぶ

CODE for IKOMAは、生駒市の市民活動団体として登録している。Code forが立ち上がる前までは、パソコン教室のようなものはあったものの、ITに関する団体はほとんどなかった。
Code forという活動が始まってからというもの、「地域でITを活用して何かやってみたい」「最新のテクノロジーを活用してみたい」という人が集まって来てくれるようになった。活動場所は、生駒市の市民活動推進センターをお借りしているが、センターの方の「これまで、皆さんのようなシュッとした人達が来ることはなかった」という言葉にもそれが表れている。

人の行動スイッチを押す「きっかけ」を運ぶもの

立ち上げ当時から継続してこの活動に参加してくれている人もいるし、シビックテックの活動を知って、CoderDojoなどの活動を始めた人もいる。生駒においては、うずうずしていた人の行動スイッチを押すきっかけとしても、はたらいていると思う。

直接の因果関係は分からないが、Code for IKOMAの運営メンバーは、立ち上げ当時は殆どが会社員であったが、今や殆どが会社を作ったり、フリーランスになったりしている。会社を辞めて、自治体職員になったメンバーもいる。

「行動すること」「継続すること」で、じわじわと周りの人も動き出している。生駒では、そんな実感がある。

ITコミュニティの精神を地域に広げる

ITコミュニティは、元来、特定のソフトウェアや特定の技術のもとにユーザーが集まり、自身の知識を高めたり、互いのノウハウを共有して高め合ったりするために出来上がるものである。
勿論、こういった勉強会に対して報酬が出る訳ではないが、IT業界は自身で知識を高めようとしなければ置いていかれる世界であるから、業界の人たちはこぞって参加する。コミュニティの活動は当然手弁当であるが、ソフトウェアや技術の利点をシェアすることにより、当該技術の普及を進める場や、自身の技術力をPRする場としての利用等、様々なスタイルで活動が行われている。
シビックテックコミュニティはITコミュニティが由来であるから、この精神を地域に広めるきっかけになるが、元来こういった精神自体が地域にないことが多いため、Code forの登場によって、その扱いに戸惑っている周辺団体も少なくないように思う。活動を続けていくことで、徐々に定着してきている。

幸福の価値観が多様化する時代のコミュニティ

無料でサービスを受けられるものがどんどん増えている。何でも無料で便利になるが、無料で提供している人たちはどこで利を得ているのか。その中で、幸福の価値観の多様化についても一つ言えることがあるように思う。

シビックテックコミュニティは、地域課題を考える上で、多様なメンバーが参加することで、地域に根差した課題解決が可能になると考える。だから、地域の人たちにいかに参加してもらえるか、を考える、泥臭い部分が非常に重要だ。
こういった背景から、Code for IKOMAでは、多くの地域団体と繋がり、地域内でのコミュニケーションを取る場づくりに比重を置いている。そういった場から近所の繋がりが増え、お店に行ったら「今日は○○がおススメですよ」と気軽に話せるようになったり、時にはオマケしてもらったり、「今度こういうイベントやるから、良かったら来てね」というような感じで、普段から地域を楽しめる環境ができてきた。日々の暮らしに華を添えられる、というのはお金で得られない価値の一つであろう。

どローカルな話とは一転して、日本全国に留まらず、世界とも繋がれるのがCode forである。Code for Japan SummitCivic Tech meetupをはじめ、オープンデータを活用するイベント等、各地のコミュニティが一堂に会する機会があるので、全国各地で活躍する人々とのネットワークが出来上がる。また、Code for Japanは世界のコミュニティが集まる「Code for All」にも参加しているから、行く気になれば世界ともどんどん繋がれる。世界の先進地の人たちと直接コミュニケーションを取れるというのは、非常に貴重な機会だ。

私がCode forを立ち上げた当初は、「いざという時の地域の繋がりが作れたらいいな」と思っていた程度であったが、思わぬ広がりもあった。

大事なことは、ペイフォワードの理念で、「まず自分から与える」ことであり、与えなければ戻って来ない。シビックテックに繋がりだけを求めてやって来て、その利だけを得ようとしている人たちは、それ以上得られるものはないかもしれないし、シビックテックの活動自体を継続するのも難しいかもしれない。生駒では、幸いにして同じマインドを持つメンバーが集まることができたということだ。このメンバー達のお陰で、お金には代え難い価値を得られていると感じる。

知らなかった街の魅力に触れる「きっかけ」を与えるもの

シビックテックの活動は様々だ。街歩きをして街のいまを感じたり、街の人の話を聞いたり、自治体へ自分達の声を届けるための活動をしたり。

幅が広すぎて分かりにくいので、活動の分類はこちらの記事を参照されたい。
シビックテックとは何か? 5分野別の事例に見る、社会問題のITによる解決方法

シビックテックの活動をしていると、街がどんどん面白くなる。それまで日常で持っていなかった視点で、街を見ることができるようになる。各地のCode forの活動を知って、自分の街と比較することだってできるし、連携することもできる。

Code for間の連携については、こちらの記事を参照されたい。
乱立する「Code for X」の地域間連携について

客観的に見る視点で、これまで見えなかった街の魅力を発見する。街を面白くするのに、「若者・よそ者・ばか者」が必要とされる由縁だろう。魅力に気づいて、新たに参加を希望する人がコンスタントに定例会に来てくれている。

地域におけるITの翻訳者

地域に限らず、どんな分野でも活かすことができるのがITの利点であるから、シビックテックのコミュニティは、既存の分野特化した地域コミュニティ間を繋ぐ役割になることができる。既存のコミュニティは、自分達の世界の中だけで完結していることも多いから、コミュニティを繋ぐことで、似た課題に向かって複数団体が協働したり、複数の得意分野を活かしたりすることが可能になる。

地域ではITを知らない人も多い一方で、シビックテックコミュニティへの参加者属性としては、最新テクノロジーに詳しい人も多いから、新しいものと地域の人たちの間の通訳になることが期待される。

最新テクノロジーに尖ったイベントを行うだけではなく、簡単な技術で楽しめるイベントを開催し、参加者のハードルを下げるということも大事な要素である。

キラキラしているように見えて、実は泥臭い。しかし、そのような泥臭い経験を経てこそ、本当に価値あるものが生まれてくると思う。

付録 : 2017年のCODE for IKOMAの活動

イベント企画・運営
IKOMA Civic Tech Award 2016 運営協力
アーバンデータチャレンジ2017 奈良ブロック キックオフ
GovHack生駒市 企画・運営協力
Code for Japan Summit 2017 防災減災セッション

講演・話題提供
IKOMA Civic Tech Award 2017 審査会 オープニングトークでの協力
奈良県公開シンポジウム「データ活用による地域の新たな価値創出」
・シビックテックにおける創造的社会活動の研究会(金沢)

2017年からのプロジェクト
4919 for Ikoma プロジェクト
いこまの輪プロジェクト 参画
学び舎GO!プロジェクト
・ホームページリニューアルプロジェクト